「名目上は視察、女王の命とあらば心置きなく祖国を観察できよう。王子を身体に良いとされる湯治場にできる限り多く案内してくれぬか」

両陛下の心の内を知り、胸が熱くなった。

「ハーン殿には旅先での薬の手配を頼む。行く先々で、今後も様々な症状が出よう。伝令の者はこちらで手配いたす」

「承知いたしました」

「この事は葵にはまだ、内密にな。十六夜にて話そうと思うておる」

「賢明にございまする。その頃にはお身体の回復具合も、後遺症もわかっておりましょう」

両陛下は紅蓮殿とハーン殿に残るよう言われ、わたしを先に退出させた。

見習い騎士には話せないこともあるに違いないと、素直に受け止めた。

両陛下は王子が朔の日になさったことを真摯に受け止め、王子のお人柄まで考慮し、事を進めていらっしゃることに驚いた。

お叱りを受けるものと思っていた自分が恥ずかしかった。