「お詳しいのですね」と言いながら、王子の質問に答える役人の顔に、王子を軽視した横柄な態度を幾度も感じた。

「凛音。この景色を、この夕陽を俺は忘れぬ」

王子の頬を一筋、雫が伝った。

視察から帰還した私たちは、到着間もなく謁見の間に向かった。

視察に同行していた瑞樹さまは王宮に着くなり、フラリと姿を隠した。

早々に部屋へ戻り休まれるに違いない。

王子が謁見の間で、視察した各地の報告をすると、王陛下は静かに頷かれた。

女王陛下は暫し黙り込み、険しい目をなさった。

「ご苦労さまでした。江藍の件は、直ちに領主を問いただし対処いたしましょう」

女王陛下は王陛下に宥められ、穏やかに仰せになられたが、その目は笑っていなかった。

私が謁見の間を出ると、王子はフーッと長い溜め息をついた。