「なんだよ。俺のときはいつも、忘れた頃にお礼言ってくるクセに」

 奏多がわざと意地悪な口調で言った。

 「奏多には昨日のうちに言ったじゃん」
 
 「昨日は、だろ?」

 今度はわたしが目を細くして笑う奏多をじっと見た。

 そんなやり取りにトモちゃんが笑っていた。

 「トモちゃん、クリームソーダふたつね」

 「え?」

 わたしが奏多を見ると、

 「俺の奢りな。最初で最後だぞ」
 
 笑窪を見せて笑った。

 わたしが初めて飲んだ炭酸はここのクリームソーダ。

 喉の奥で弾ける炭酸が苦手だったけど、奏多の好きなものを一緒に共有したからか、それが嬉しくて、今ではこれだけは飲めるようになった。

 むしろ、好きだった。

 「ごゆっくりね。お二人さん」

 アイスの上にさくらんぼの乗ったクリームソーダを並べると、トモちゃんはいつも通り奥の席に座りテレビの電源をつけた。
 
 通り魔のニュースがしつこく報道されている。犯人の男の特徴は前歯がないだとか。マヌケな犯人の顔を想像すると少し笑えた。