カリカリカリ…ゴシゴシ、カリカリカリ…

鉛筆を走らせる音がやたら部屋に響く。

あれから屋敷に戻って来ると、出迎えてくれた人たち全員に心配されてしまった。

特に奏多さんと暁くんに心配されて、休んでろとご飯を作るのはとにかく、片付けは台所から追い出されるという実力行使をされた。

そんなわけで、部屋に戻ってテスト勉強です。目指せ満点だもんね。とか言いながら課題を片付けるのが優先だ。

それにしても…。さっきの季龍さんは何だったんだろう。抱き締められるし、ずっと抱っこされてたし…。

ダメだ。恥ずかしくて死にそうです。

頭をブンブン横に振って目の前に広げたワークに集中する。

鉛筆を走らせる音がまた部屋を包んだ。

「ことねぇ?」

「?」

声をかけられて顔を上げると、襖から顔を覗かせる梨々香ちゃんがいる。その顔は少し暗くて、寂しそうだ。

首をかしげると、入っていい?と遠慮がちに聞かれ、頷くと静かに入ってきて抱きついてきた。

とりあえず鉛筆を置いて、梨々香ちゃんを抱き締め返して頭をポンポンと撫でる。