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「莉胡。……莉胡。

お前いつまで寝てんの?キスして起こすよ?」



「っ、起きてます準備します……!」



──夏休み最終日に東西の関係が変わり、その翌日。

始業式なのだけれど昨夜帰ってきたのは日付が変わる前で、そこからお風呂に入って寝たのが1時頃。



完全に遅刻しそうな時間まで眠っているわたしをたたき起こしにきたのはもちろん幼なじみで。

ひさびさに迎えに来てくれたのがうれしくなってしまって、寝たふりをしていたら冒頭のセリフ。



あわてて飛び起きたわたしに、千瀬がため息を吐く。



「なんなのその反応。

……キスするの嫌みたいで傷つくんだけど」



「べつにそんなつもりはないから……!」




あわてて否定して、自分が口走ったことに、顔が赤くなる。

そんなつもりはない、って、キスするのが嫌じゃないって、認めてしまったのとおなじだ。



「へえ。……嫌じゃないの?」



「っ、」



「じゃあキスしてあげるからそんな端に逃げてないで、こっちにおいでよ。

莉胡が今度こそ俺から揺らがないようにたくさんしてあげるから」



甘い。甘すぎる。

こんなの毎日聞かされたら心臓がもたない。さりげなく揺らがないように、って嫌味を入れてくるのが千瀬だけど、それも愛情に聞こえるなんてどうかしてる。



「おいで、莉胡」



「っ、遅刻するからいまはむり……!」