うらやましい、と。

ただ純粋に思いを述べた由真ちゃんを見て、唐突に千瀬の彼女が由真ちゃんであることを思い出す。──その瞬間、ぐっと胸に重いものがのしかかったような気がした。



「莉胡ちゃん?」



「え?ああ、ごめんね。

たしかに昔から一緒にいるけど、あんまりこれといって目立つ思い出はないわよ」



「ふふ。子どもっぽい千瀬くんって、あんまり想像つかないかも」



「でしょ?

……子どもっぽい千瀬なんて、わたしも見たことない気がする」



昔からわたしは、千瀬の背中ばかりを追っていたから。

いまになって考えれば考えるほど、彼がどんな表情だったのかを知らない。



隣を歩けていたら。

……ちゃんと、千瀬の顔を、見ていられたかもしれないのに。




「あ、でも……

拗ねてるときの千瀬くんって、ちょっと子どもっぽいね」



「……そう、かしら?」



「うん。だからすごくかわいいなあって」



拗ねてる千瀬なんて、見たことあったっけ。

……十色が電話で、千瀬が拗ねてるみたいなことは言ってたけど。ずっと一緒にいたはずなのに、なぜか全然思い出せない。



それとも。

幼なじみには見せない、彼女だけの、特権?



「ねえ、由真ちゃ、」



「あっ、あれが言ってた水着の展開じゃないかな?

……って、莉胡ちゃん、なにか今言いかけたよね?ごめんね、かぶせてしゃべっちゃって」