外までのお見送りをいつものようにとめた瀧川さんの後ろ姿を、半ば呆然としながら見送る。


かたりと上品に閉まった扉を、次のお客さまがいらっしゃるまで、ただ見つめていた。


心臓が騒ぎ立てている。


顔が熱くて、胸の温度ばかりが下がらなくて、そのくせ頭が真っ白だった。


寂しくなるのはお互いさまだなんて、店員とお客さまの関係だって分かっていても舞い上がる。舞い上がってしまう。


勘違い、したくなる。


きつく、きつく、唇を噛んだ。


……何か、お返しを考えよう。


邪魔にならないものがいいだろうから、ええと、消えもので、お嫌いならどなたかに譲れるように、できればお菓子がいいよね。小物や飲み物は譲りにくい。


瀧川さんがお好きなのは甘さ控え目なものだから、このあたりにないお店の、日持ちして、個包装の小さいものがいい。

お渡しするのは朝になってしまうと思うから、冷蔵品じゃなくて、できれば持ち歩いてもかさばらない包装で、差し上げてもそんなに気負われないようなもの……って条件が多くて難しい!


でもお返しはしたいし! しないとちょっと感じ悪いし!


それに、計算高くてずるいかもしれないけれど、お返しをしたら、お返しへのお返しというか、なんというかこう、続く気がする。

お話するきっかけが増えると思う。


もちろん増えなくてもいいけれど、ちょっとくらい下心があっても許してほしい、です。