「先日は相談に乗っていただきましてありがとうございました。おかげさまで同じ差し入れにならずに済みました」


律儀に綺麗で深いお辞儀をされて、慌ててこちらも頭を下げる。


「こちらこそ、お忙しいところ細やかなご配慮をいただきましてありがとうございます……! 全然お役に立ててないのに催促したみたいになってしまって申し訳ありません……!」

「いえ。私が差し上げたいなと思っただけですので、どうぞお気兼ねなくお召し上がりいただけましたら幸いです」


立花さん、と密やかに笑って、一度用意してきた台詞をなぞるように口を開きかけ。


ゆっくり言葉を探してから、瀧川さんはやっぱりあらかじめ言葉を決めておいたらしい特有の明確さで、私を見つめた。


「私も。私も、立花さんがいらっしゃらないと残念です。寂しいです」

「っ」


息をのむ。いただいた紙袋を取り落としそうになって、慌ててきつく握り直した。


「あなたに……あなたにお会いしないと、稲やさんにお邪魔した気がしなくて。いらっしゃらなかったときは、また明日伺おうといつも思います」

「こ、光栄です……」


消えそうな声でなんとかそれだけ呟く。何を言えばいいのか分からなかった。


「寂しいとおっしゃってくださって、嬉しかったです」


それではまた、十三時に参りますね。