「……楽しみにお待ちしておりますね」


ちょっと迷ってからそっと呟くと、はい、と瀧川さんも優しく笑ってくれた。


……あああだめだうれしい。どうしよううれしい。


どうしようもなく口元が緩む。


嬉しくて頰が緩んで、慌てて引き締めようとして、きりっとした顔を作ったけれど、でもやっぱり嬉しくて緩んで、を繰り返してしまって、慌てて手で隠そうとしたらばっちり目が合ったので、どちらともなく照れ笑いをした。


「あの、立花さん」

「はい」


柔らかな微笑み。

赤い耳。照れた声。

やっぱり名札は見ていない、こちらをひたと見据える視線。


不意打ちの名前に、もう上がりきったと思っていた体温が沸騰した。


心臓がうるさい。顔が熱い。多分私の耳も、瀧川さんと同じくらい真っ赤だろう。


瀧川さんは、つけ足すみたいに、秘密を打ち明けるみたいに、立花さん、ともう一度小さな声で私を呼んで。


「明後日お会いできるのを、楽しみにしております」

「はい……!」


夢みたいだ、と思った。


あなたが笑ってくれた。照れたところを久しぶりに見た。


あなたが名前を呼んでくれただけで。それだけで。


まるで、あんまりにも幸せな夢みたいだ。