小倉ひとつ。

だって、こんなに照れられると思わないでしょう。


こんなにひどく優しい顔をされるなんて、想像もしなかった。


もし寂しいって言ってしまったら、光栄です、とかそんな感じにさらっと流されて、気まずい沈黙で終わるんだとばっかり思って怯えてたのに。


私は今、確実に赤い自信がある。


……引かれなかった安堵に、少し欲が出る。


この勢いじゃないと聞けないだろうと、頑張って口を開いた。


「瀧川さん、あの……明後日は、いらっしゃいますか」


ねえ、瀧川さん。


私、あなたを忘れる勇気なんて、いつまでだって出なくていい。


固唾を飲んで返事を待つ。


瀧川さんは面くらったように小さく瞬きをして、照れからか、赤い耳にそっと触れ。ゆっくり口を開いて、それでも即答した。


「はい」


普段なら、「はい、そのつもりです。明後日にはお邪魔しようかと思っております」みたいに丁寧に返事をくれる瀧川さんの、極力短く作られた返事は、それでもやっぱり揺れてかすれていた。


なんでこんなに短いかって——そんなの、その耳の赤さが答えだろう。


さらりと流れた黒髪から覗く形のいい耳は、明らかに赤かった。


「あの、瀧川さん」

「はい」


言おうか迷って。押しつけがましくないかなとか、強引じゃないかなとか考えて。


でもやっぱり、言いたくて。