「今日は何になさるんですか?」

「そうですね……」


まだ決めてないんだよね。


どうしようかなあ、と見遣ると、瀧川さんは今日も小倉だった。


「私も小倉にします」

「お揃いですね」


ふふ、と微笑みをこぼした瀧川さんに、ふふ、と私も笑った。


「はい」


お揃いにしたいので、とは冗談に紛らわせても言えなくて、小さく頷く。


くすくす笑っていて気づいた。


瀧川さん、まだ一口も食べていない。


さっき座ってしばらくスマホをいじっていたのは、お仕事とか友人関係とかあるんだと思うけれど、今は、もしかしてあれかな。


「もしかして、私待ちですか……?」

「ご一緒したいなと思いまして」


おそるおそる伺うと、にっこり笑顔が返ってきた。言外の肯定である。


「お気になさらずお先にどうぞ! 焼きたてが美味しいですから」


美味しいうちに是非、と言い募ると、ありがとうございます、と受けてくれたものの、あんまり一口が大きくない。


急いで注文して、いつも一緒だからと用意してくださっていたお抹茶も受け取って、早足で戻ってきたら、やっぱり瀧川さんのたい焼きはあんまり減っていなかった。