でも、これは甘い方が美味しいかなというときにはたまに、結構たっぷりお砂糖を入れることもある。


そういう甘ーいあんのときは、甘さによっては好きな人とか忙しい人とかには「以前のチョコレートのときと同じくらいの甘さです」というふうに、直近の大体の指標を示す。


瀧川さんには特に、あらかじめどの程度の甘さかお話をしてから、小さい試食をお出しするのが常だった。


そうすると食べる前に大まかに判断できるから、「あれ以上甘いなら苦手だと思うので小倉にします」とか、「それでしたら試食させてください」とかお返事をいただける。


瀧川さんは、忙しい朝の隙間を縫って、うまく時間を調整して来店してくださっている。


お急ぎかなあというときはなおさら、甘さとか熱い方が美味しいとか冷めても美味しいとか、そういう指標を示すのを忘れない。


焼きたてが美味しいものは、そう伝えたら一旦やめて、「また休日に来て、そのときにいただきます」と言ってもらえるほど、瀧川さんは稲やさんを贔屓にしてくださっている。


だから私は店員として、ちゃんと丁寧な対応で応えたい。


憩いの場所だって思ってもらえたら嬉しいし、また来ようって思ってもらえたら嬉しい。


憩いの場所で。

たい焼きが美味しくて。

たまに話をして。


瀧川さんにとって、煩わしいことは何もない場所でありたい。


だから、絶対に私の私情を挟みたくなかった。