「ありがとう、ございます」


にっこり優しい顔をされて撃沈したけれど、顔に出さないように頑張った。


とっさに必死で笑顔を保った私は偉いと思う。


わたし、がんばった……!


うるさい心臓と上がりかけた体温を無理矢理抑える。


心中騒ぎながら、こっそり深呼吸をして落ち着いた。


瀧川さんはいつも小倉を食べるけれど、胡麻の日にはたまに、うんうん悩んで胡麻を食べることもある。


多分今回も、視線を追う限り、小倉か胡麻かの二択で迷っているんだろう。


「もしよろしければご試食なさいますか?」

「いえ、以前もいただきましたので胡麻は大丈夫です。ありがとうございます」


「いいえ」と返した私に、「うーん、でも迷いますね」と呟いた瀧川さんは。


何か素敵な案を閃いたような顔で目を瞬かせて、にこやかに「今日は胡麻にします」と言った。


あんなに悩んでいたのがまるで嘘みたいに、するりと。


決まってよかったけれど、あんまりにも突然あっさり決まったのを訝しみつつ、かしこまりましたと私が返事をする前に、次の言葉が続いて。


「立花さんの新しいPOPが素敵なので」


だから胡麻にします。