お薄を点てて、ひとつずつ運ぶ。


高校生のときも相席させてもらったことがあった。

たまたまあいている席がなくて困っていたら、声をかけてくれて。


『よかったら隣にどうぞ』


いえ、と帰ろうとしたんだけれど、どうぞどうぞ、と重ねてすすめられて、びっくりしたことを覚えている。


いいのかな。

相席って、だって、女性とは絶対にしないでしょう、瀧川さんは。


つまりこれは、私が女性ではなくて女の子だと、年齢差があるからなんの問題もないだろうと、そういうことだろうか、なんて。


『……その、よろしければ』

『もちろんよろしいですよ』


ちょっとおどけた瀧川さんに、いろいろを押し込めて私もおどけた。


『よろしいんですか。ありがとうございます』

『いいえ』


……くそう。もちろんだなんて、思い出すだに悔しい。


でも好きだ。あのときも、今も。


ずっと好きだ。


「お待たせいたしました」

「お待ちしてました」


おどけた瀧川さんに、苦く笑う。


今も昔も変わらない。


何も変わらないまま、私は瀧川さんが好きで、瀧川さんは私を好きじゃない。


お昼休憩の間は、かぼちゃたい焼きが美味しいとか、おすすめしてくださってありがとうございますとか。

お薄が美味しいとか、無理を言ってすみませんとか、でも許可をいただけてよかったとか。

そろそろ本格的に肌寒いけれど紅葉が綺麗になってきたとか、今は大学生だとか、そういう当たり障りのない話をした。