よろしければってついていないあたり、優しい提案の形をしているけれど、瀧川さんの中で一緒に食べるのは決定事項らしい。


お昼の休憩時間は一時間です、と前に言った。

それを覚えているんだと示されて、ひとつ逃げ道がなくなった。


ええと、あとは私何を言ったかな、多分全部だ。

多分、下手な言い訳はできないくらいには全部話した。


ああもう、過去の私の馬鹿……!


私はこんなに慌てているのに、瀧川さんは相変わらず落ち着いている。


おかしい。慌てているのは私ひとりじゃないか。


「……はい」


体が勝手に反応して、気づいたら頷いていた。 おかしい。


ありがとうございます、とますますにっこり笑った瀧川さんにお盆ごと受け取られてしまって、いよいよ逃げ道がなくなった。


待って、ええと、たい焼きだけじゃ駄目だった気がする。

そうだ、お薄を忘れてた。いつも瀧川さんはお薄だから、きっとそう。


稲中さんに報告に行って、改めて休憩いただいてこないと。


必死で頭を働かせて、回らない呂律を無理矢理動かす。


「お薄で、よろしいですか」


なんとか形になった。よし。


「はい」

「かしこまりました。少々お時間いただきたいのですが、よろしいでしょうか」


——堪えろ、私。しっかりして。


どれだけ話しても。

どれだけ瀧川さんが了承してくれて、微笑んでくれても。


あくまで店員とお客さんでいなければいけない。


勘違いを、してはいけないのだ。