小倉ひとつ。

穏やかな眼差しが、五文字の上を何度もなぞる。


「……うん。やっぱりすごく似合うよ」


微笑みと淡い吐息混じりの相槌を寄越して、要さんは「小倉ふたつ、お願いします」と注文した。


書き留めを滑らせてペンを渡す。

かたりと静かにペンが置かれた音に書き留めを見遣ると、受け取り予定時間が夕方になっている。


「あれ、受け取りはお昼じゃなくていいの?」

「今日は早く仕事終わる予定なんだ。お持ち帰りにするから、帰ったらふたりでいただこう」


くしゃくしゃの顔に、うん、と微笑む。


「でもお昼ご飯は? お弁当?」


お弁当は必要なときに各自で作っているのだけれど、私がバタバタお弁当を詰める傍ら、要さんは私にキッチンを譲って他のことをしてくれていた。


最近お気に入りの果物串をうんうん唸りながら選んだときも、出かける間際に行ってきますの挨拶をしたときも、お弁当を作っていなかったような気がする。

竹製の果物串というかフルーツピックというかは、桜にするか梅にするか紅葉にするかひょうたんにするか悩みに悩んで、季節があまり関係ないひょうたんにしたのだけれど。


「うん。おにぎり」


要さんが笑って鞄を少し揺らしてみせた。


なるほど、おにぎりなら時間がかからない。私が家を出てからさっと握ったらしい。


確かにご飯はちょっと多めに炊いてあった。