小倉ひとつ。

私の好意は、決して憧れだけじゃない。

ちょっぴり盲目かもしれないけれど、執着だけでもない。


穏やかなあたたかさに満ちた尊敬が底にある。だから、一緒に歳を重ねていくことに不安はない。


要さんはどこか距離を探っている節があった。


年が離れていることも、自分が初めてなことも、交際期間が短いことも気にしていて。

私が要さんを好きなことを疑ってはいなくても、この恋が愛の延長線上にあるかどうかは測りかねていたように思う。


当然だよね。


いくら言葉を尽くしても私の気持ちの正確なところは私にしか分からないうえ、初めてな私にもうまく分かっていないところもあるから、好き以外に言えなかったんだもの。


私は要さんに向いているこの気持ちしか知らないけれど、でも、この気持ちが愛じゃないなら、なんて言えばいいんだろう。


これがきっと愛だと信じたい。それ以外にぴったり当てはまる言葉を知らない。


長年恋をするということは、一緒にいたいと思うことは、好きが積り続けるということだから。


私の「好きです」は、そういう幸せに満ちた意味だから。


「そっか。それは、幸せだなあ……」


ありがとう、と聞き取りにくくかすれた呟きに答える代わりに、そっと手を重ねた。


くしゃくしゃに歪んだ声音とは反対に、優しくてまるい体温。


要さんの欲しいものは、もうしばらくゆっくり考えてもらうことになった。