小倉ひとつ。

「うん。……ありがとう」

「いいえ」


約束をくれてありがとう、と言われて限界だった。


要さんが好きだと思った。要さんを好きでよかったと思った。


恋愛ごとにおける約束は、細かければ細かいほど、きっと守るのが難しい。


だって、他の人を見ないでなんて言ったところで、視界には入ってしまうし、そんなお願いはお仕事の邪魔になってしまうし、状況によっては、意識だってせざるを得ないこともあるかもしれない。


でも、差し入れとか旅行のお土産とかで贈り物をするにしても、たい焼きを避けることはきっとできると思う。

綺麗な洋菓子を選んだり、素敵な飲み物を選んだりしてもらえれば、きっと。


守りきれない口約束をしてもらうより、選ぶときの誠実さを約束してもらう方がずっといい。


要さんが約束をきちんと守ってくれるひとなのは、ちゃんと知っている。


でもそれじゃあ物じゃないので、バタバタしていたのがようやく落ち着いた今年のクリスマスプレゼントは、お出かけとご飯と、意を決して希望を言った。


「要さん」

「ん? なに?」

「クリスマスにしては和風だと思うんだけれど、これが、欲しいんですが」