小倉ひとつ。

改めてお互いの家族に挨拶をして、両家の顔合わせをして。


記念日にするならと、結婚式の準備をしながら話し合って、忘れにくいように来年の要さんのお誕生日に婚姻届を出して、結婚式を挙げることにした。


本当は私の誕生日がいいなと思ってくれていたらしいけれど、そうしたら年度始めになってしまう。

要さんは毎年とても忙しいうえ、みんながバタバタしている時期に挙式するのは難しそうだった。


もう少し早く挙げてもいいのかもしれないけれど、私は来年でようやくお仕事に慣れる頃合いだもの、お仕事の一年目が終わるまではお仕事に注力したい。


そうすると結局来年の四月以降になるし、記念日は分かりやすい方がいいし、新婚旅行も行くとすると先立つものに余裕がほしいので、無理せずのんびりゆっくり準備をする方が向いているかな、という結論だった。


「俺三十一か……でもまあ、記念日が分かりやすいと何年目か数えやすくていいな。毎年誕生日よりそっちをお祝いしたい……」


要さんが遠い目で呟いたので、思わず。


「えっじゃあ私は要さんのお誕生日をお祝いする」

「ええ、結婚記念日を一緒にお祝いしてよ」

「それはもちろん一緒にお祝いしたいけれど、そうじゃなくて。その、お誕生日、お祝いしてくれる人がいないって前に言ってたでしょう。あれって、今もそうですか」

「うん、全然いない。家族は忘れてなければおめでとうくらいは言ってくれるけど、結構な確率で忘れられてるし、覚えてても話のついででお祝いってほどでもないから」

「うん。……だから、ひとりじめ、したい」


目を見張った要さんが、一拍置いて、くしゃりと髪を崩した。


「かおり」

「う、うん」

「好きです」

「ありがとう……?」