小倉ひとつ。

「えっ、もちろんいいけれど、お仕事? 大丈夫? 延期した方がいい?」

「いやごめん、言い方を間違えた。違くて。当日さ、玄関で待ち合わせしない?」

「っ」


『お祝いなんていくらでもする』

『デートだっていくらでもする。欲しいものだってなるべく叶えるけど』

『これからは、出かけるときは出かける前に絶対約束する。出かけるの明日だねとか楽しかったよねとか何回でも言い合おう』

『それでいつか、欲しいものができたときは真っ先に俺に贈らせて』


交わした指切りを思い出した。


「……する。したい」


要さんは、いつも優しい約束をくれる。


もちろん約束できるだけでももう充分嬉しいのだけれど、その約束を、ただ結んだままにしておかずに、さりげなく叶えてくれる。

それが本当に嬉しい。


「よかった。じゃあ玄関で待ち合わせよう」

「うん……!」


このひとを好きでよかったと、何度目か分からないことを思った。


要さんが好きだなあと、幸せなことを思った。