「瀧川さん!」

「はい」


がらっと引き戸を開けて勢いよく呼ぶと、少し驚いた顔の瀧川さんとすとんと目が合って、思わず固まった。


固まった勢いで、少し落ち着く。


慌てすぎだ。ちょっと落ち着こう。


「ええと、お騒がせしてすみません。ただいま戻りました。お待たせいたしました」

「いいえ。おかえりなさい」

「っ」


おかえりなさいってなんだ。


くそう、瀧川さんが無自覚に人たらしすぎる。


「どうなりました?」

「ええと、許可はいただけたんですが」

「そうですか! よかったです」


だから、そこで嬉しそうにしないでほしいです……!


喉を詰まらせたけれど、こっそり深呼吸をして、どうにか気を取り直して続ける。


「条件がありまして」

「条件?」

「はい。その……」


ああもう。顔が熱い。


絶対無理だよ。お断りされるよ、こんな条件。


だって瀧川さんは、女性とは相席しないのだ。


「お昼休憩をいただきまして、お仕事でないならお出ししても構わないということでした」


お盆からかぼちゃたい焼きを軽く持ち上げて示す。


「……お出ししたら、是非ご一緒させていただくようにとも、言われまして……」

「え?」


あまりに言いにくくてだんだん小声になりつつなんとか言いきると、瀧川さんが固まった。


ですよね……!