小倉ひとつ。

「ね、要さん」

「ん?」

「今度ね、美味しいたい焼きのお店に行かない? 他県だからちょっと遠いけれど、とっても評判いいみたいで行ってみたいの」


ここなんだけれど、とスマホの画面を少し明るくして見せると、一緒に覗き込んだ要さんは即答した。


「いいよ。行こう」

「ありがとう」


そっと息を吐きつつ、ごそごそ観光情報誌を引っ張り出して、付箋を貼っておいたページを開く。


「あのね、連休だから混んじゃうかもしれないんだけれど、たい焼き屋さんの他にもね、このお茶室とここの庭園に行ってみたくてね。あとこの美術館と、この体験もやってみたくて」

「うん。あ、ここいいね。体験面白そう」

「でしょ? 人力車も楽しそうだし乗らない?」

「乗りたい」

「よかった、乗ろう乗ろう。それでね」


ページをいくつかめくって、見開きの地図を広げる。


目的のたい焼き屋さんは印刷されていなかったので、行きたいお店の位置関係がわかりやすいように自分で書き込んである。よし頑張れ私。