小倉ひとつ。

「うん、喜んで」

「……ありがとう」


大事にしたいんだ、って祈るみたいに目を伏せて笑うあなたに、ひとつ、告白をしよう。


「要さん」

「うん?」

「私、要さんに立花さんって呼ばれるの、すごく好きだったよ。かおりさんって言われたときは嬉しくてどうしようかと思ったし、名前を呼ばれたらね、いっつも、好きだなあ、ああ好きだなあって思ってた」

「……うん」

「要さんの名字は綺麗だよね。瀧川って涼やかで素敵で好きだよ。それでね、私にも似合うんじゃないかなあと思うの」


盛大に逆プロポーズっぽいことをかますと、要さんがくしゃりと笑った。

穏やかな、目尻が下がった笑みだった。


「……そうだね。きっと、かおりにすごく似合うよ」

「そうでしょうそうでしょう。画数多いとちょっと書くの大変かもしれないけれど」


ふは、と緩く噴き出される。よし、ようやく普段の笑顔になってくれた。


「そうしたらできるだけ俺が書くから安心して。公的書類以外はなんでもどうぞ」

「うん。疲れてるときはほんとにお願いしちゃおうかな」

「任せておいて。いつでもお願いされる」


笑い合いながら、お互いを手繰り寄せるみたいに手を握る。すっかり馴染んだ体温と節の高さ。


「後で一緒に指輪検索して候補考えて、日程も決めよう」


いろいろ見て回るにせよ、だいたいの見当はつけてから出かけたい。雰囲気とか、方向性とか、お互いの好みの擦り合わせが必要だろう。


「うん」


ありがとう、と短いキスが降ってきた。答えずに、好きだよと呟く。


「俺も、好きだよ」


ぎゅうと背中に回った腕は、あたたかかった。