小倉ひとつ。

私の恋の長さに、多分要さんはおおよそ見当がついている。


だから、私の熱量と要さんの熱量が同じだって、ふたりとも同じ方向性の好きを共有しているって、

要さんを本気で好きだってちゃんと信じているとさりげなく態度で示してくれるのは、あまりに長い間燻らせた恋ゆえに、いろいろと臆病になりがちな私には、とても嬉しい。


それがおそらく無意識のことなら、なおさら。


要さんが年の差を気にしてくれるのは、年上だからこそだろう。

私の経験不足のせいでもある。結婚に憧れはあっても、今まで指輪なんてまるきり縁がなかったから。

なんとも間の抜けた返しをしてしまった自覚はあった。


「ごめん、ちょっとびっくりしただけ。そんなことない。嬉しい」


慌てて言い募る。



「……うん」


それでもやっぱり眉が下がったままだったから、そっと手を手繰り寄せる。


別に、気を使ったわけじゃないんだけれどな。


「ね、要さん」

「うん?」

「私、要さんだから好きになったんだよ」


言外に年齢差は関係ないと笑った。


「要さんは素敵なところがたくさんあるなあっていつも思ってる。でも、私別に、素敵なところだけを好きになったんじゃないよ。年上で頼り甲斐があるから好きになったんじゃない。要さんを好きになったんだよ」


もちろん私にとっては、目上っていうのも素敵なところだけれど。


おどけたつけ足しにふたりで笑い合う。お互いの笑い声は、随分昔から耳に馴染んでいた。


湿った呼吸が重なる。


「ごめんね。ありがとう」

「ううん」

「俺も、かおりが年下だから好きになったんじゃないよ。でも、やっぱり年上だからって格好つけたくなっちゃって」

「うん」

「ごめん、言い訳した」

「ううん」


もう、年のことは言わない。


「指輪、一緒に選びに行ってくれる?」