私も一応茶箱点までなら許状をいただいているけれど、

簡略化されたお座敷で、裏で点ててお持ちするだけだから、そこまで本格的ではないので私でも別段問題ないけれど、

たまにあんまりにも忙しいときは私も点てるけれど、なんで指名なんて。


「あなたにお願いしたいんです」


気まぐれだと思うのに、何か他の理由を期待したくなるのは、瀧川さんの表情が真剣で、少し強張っているからだ。


……嬉しくないわけがない。


嬉しいけれど、混乱の方が大きくて。


「……確認して参りますので、少々お待ちください」


それだけ言うのが精一杯だった。


途中で気づいてはっとする。


確認して参りますので、少々お待ちいただけますか、でしょ私、あああ、すみません……!

慌てるとろくなことがない。

次。次は気をつけよう……。


確認に行くと、えっ瀧川くんが!? と驚かれ、なぜかニヤニヤした稲中さんご夫婦に快諾され、裏で休んでいた息子さんご夫婦が急遽一時的に店番をしてくださることになり、私には一時間のお昼休憩が許可されるという、まさかの事態になってしまった。


つまりはお仕事でなければいいよ、ということだ。


ち、違うんです、条件つきの許可が欲しかったわけじゃないんです……!


いや、あわよくばお断りしたかったわけでもないけれど……!