「だからお祝いにお出かけするの好きなの。これからもお願いするかもしれないけれど、そのときもまた一緒にお出かけしてくれる?」


欲しいものを他に思いついたらそちらにするけれど、と言うと。


「ああもう、かおりはもう、ほんとに……」


くしゃりと前髪を乱した要さんが、箸置きにお箸を置いた。ゆっくり目が合う。


「お祝いなんていくらでもする」

「うん」

「デートだっていくらでもする。欲しいものだってなるべく叶えるけど」

「うん」

「これからは、出かけるときは出かける前に絶対約束する。出かけるの明日だねとか、楽しかったよねとか何回でも言い合おう」


要さんの小指が私の小指を掬う。


「それでいつか、お出かけと食事以外に欲しいものができたときは、真っ先に俺に贈らせて」

「うん。欲しいものがあったら、要さんも教えてね」

「今のところ充分だよ」

「私も充分だよ」


欲しいものは、欲しかったものは、今、ちゃんと手の中にある。

要さんのお隣も、優しい微笑みも、眼差しも、名前呼びも、何もかも。


そっか、と言われた。


そうだよ、と笑って指切りをした。