「すみません、ついいつものくせで……!」

「いえ」


なるべく明るく笑って、なるべくさらっと短く流す。


予約のときは、後から揉めたり分からなくなったりしないように、絶対にお客さんの直筆で予約伝票に書き込んでいただくことになっている。


その場でお召し上がりのときやすぐお渡しできるときの注文は、受付時に店員が書く決まり。


瀧川さんはいつも予約伝票に書き込んでいただくので、慣れきった仕草をしそうになったらしい。


……ちょっと沈んだ顔なの可愛い。いや、失礼かな。


私が通っていた頃は、店員さんもお客さんも万年筆で伝票に書き込んでいたけれど、ここ最近、形がよく似たボールペンになった。


万年筆だと、まれに書き始めが掠れたりインクが上手く出なかったりして、忙しいと困る。横に寝かせて置いたときに転がり落ちることもある。


ペンスタンドに立てた方が書きやすくていいだろうから、という稲中さんの心遣いだった。


かぼちゃお願いします、と稲中さんに声をかけると、瀧川くんがかぼちゃなんて珍しいねえ、とからから明るい笑い声が返ってきた。


瀧川さんにも聞こえるくらい大きい声で、あんまり笑っている稲中さんに思わず瀧川さんを見上げて笑ったら、若干照れたように目を逸らされた。


可愛い。いや失礼だってば、私。