「いかがなさいますか?」

「そうですね……」


ちょっと迷っている瀧川さんに、これまた試食をおすすめしてみた。


かぼちゃたい焼きを吾妻さんと同じように秋らしい組み合わせでお出しする。


素敵ですね、と瀧川さんがちょっと笑うから、私はこっそり下唇を噛んだ。


……くそう。かっこいい。


「今日はお仕事お休みですか?」

「はい。でも、こちらのたい焼きが食べたくなって」


なるほど。瀧川さん、本当に稲やさんが好きなんだなあ。


「いつもありがとうございます。お持ち帰りなさいますか?」

「それも、ちょっと迷っていて」


そうなんだ。

持ち帰るなら、あんが染み出さないようなものがおすすめできて、少しは候補が絞れるかなあと思ったんだけれど。


うーん、じゃあ、と提案してみる。


「もしお時間ございましたら、こちらでお召し上がりになってはいかがでしょうか。できたてはもっと美味しいですよ」


いつも小倉を持ち帰るから、たまにはゆっくり、お茶も一緒にできたてを食べたらどうだろう。


私の提案に、そうですね、と悩みながら相槌を打って。


「かぼちゃをひとつ、お座敷でいただけますか」


ゆっくりしていってくれるらしい。やった。


「かぼちゃは少しお待たせしてしまうんですが、よろしいですか?」

「大丈夫です」

「かしこまりました」


かぼちゃひとつ、座敷と書き込むと、ちょうどペンに手を伸ばしかけた瀧川さんが、ぱっと手を引っ込めた。


……びっくり、した。


自分の手の中のペンを見て、ペンを持った手を見て、固まって、思わず顔を上げてそっと瀧川さんを見上げて。


ゆっくり、目が合う。