小倉ひとつ。

「要さん」

「うん」

「ね、要さん」

「うん」

「私のこと、名前で呼んでくれないかな」


随分前に変わってしまった、きっと私に合わせて変えてくれた呼び名を、もう一度あなたに呼ばれたい。


おそるおそる伺うと、すとんと頷かれた。


「いいよ。なんて呼ぼうか。かおりちゃんがいい? それともかおりさんがいい?」


ひええ、なんだかものすごく恥ずかしい。

敬称をつけてくれる礼儀正しさが好きだけれど恥ずかしい!


「呼び捨てで! 呼び捨てでいいから!」


慌てて訂正する。


うん、とあっさり頷いたたきが、……かなめ、さんの。美しい瞳が、まっすぐこちらを射抜いた。


「かおり」

「っ」


あっ駄目だ、呼び捨てなんてもっと駄目だった!!! と思っている間に。


「かおり。俺と、付き合って」

「っ」


腰が砕けた。えっうそ。いやうそじゃない立てない。座るのもぐらつく。え、ええと、あれ。どうしよう。心臓破裂しそう。


頭が真っ白だった。かすれた声でなんとか絞り出す。


「はい……」


そこはうんでしょ、と要さんが笑った。