小倉ひとつ。

「はい」


うつむきがちに返事をすると、呼んでも目が合わないことに苦笑するような声が降る。


「立花さん。こちらを向いてはくださらないんですか」


ひえ。


「ごめんなさい、ええと、その」


やっぱり気に障ってたあああ!


誤魔化せてなかった! ごめんなさい! でも言えない! あなたがあんまりにもかっこよくてそちらを向けませんとか言えない引かれる……!!


「あの、ご遠慮なさらず、どうぞ正直におっしゃってくださいね」


えっ、ちょっと正直には言えないかもしれないです、と思っていると、小さな呟きが落ちた。


「俺、かわされてますか」

「かわされ……?」


首を傾げた私に、曖昧な言葉選びが通じなかった瀧川さんが、困ったような顔でカトラリーを置いた。


「結構分かりやすかったと思うんですが。……何より、これでも」


ゆっくり息を吸う。


「これでも——できる限り、待ったつもりですよ」


え、え。待つ? 待つってなんだろう、今終わったものといえば卒業くらいで。


え、なんかそれだと何が結構分かりやすかったって、あれじゃない? アピールとかアプローチとかそういうあれって意味に聞こえない……?


じゃあかわすってええと、


はっとしたときにはもう、顔が真っ赤だった。バレバレだ。


立花さん、と呼ぼうとした瀧川さんを遮る。