小倉ひとつ。

私が同じにしたので、まとめてふたりぶん注文してくれた瀧川さんは、手慣れた口調で片仮名の羅列を読んだ。


すごい。私も漢字と平仮名ならまだなんとかなるんだけれど。


他二杯は後々考えることにして一旦注文を済ませると、すぐにシャンパンが出てくる。


「それでは、立花さんのご卒業を祝しまして。乾杯」


乾杯、と少しぎこちなくグラスを合わせた。


目上の方だから、友達とのときみたいに適当に乾杯するわけにはいかない。

若干不安なんだけれど、瀧川さんが何も言わないってことは、きっと大丈夫だと信じたい。


「ありがとうございます、いただきます」

「はい、どうぞ」


瀧川さんがすると、それだけでなんだかもう、優雅な乾杯だった。


しばらくして上品な盛りつけのお料理が運ばれてきたのだけれど、瀧川さんはお食事の仕方も優雅で綺麗だった。


もちろんお食事をご一緒したことは何度もあるから、上品なお食事の仕方をされるって知っている。

でも、こういう大人っぽい上品な場でご一緒すると、私には少しだけ背伸びをしないといけない場が本当に自然によくお似合いで、なおさら美しい仕草が際立つ。


「ミディアムレアがお好きなんですか?」

「ええ。大丈夫だと分かってはいるんですが、レアはちょっと食あたりが怖くて」


いつもミディアムかミディアムレアにするんです、と笑うので、同じです、と正面を見て笑い返したら、そのあまりの甘さに撃沈した。


慌ててこっそり夜景に目をそらす。


夜景が綺麗なところでよかった。困ったらお食事か外を見れば誤魔化せる……!


と思っていたら、立花さん、と静かに呼ばれた。


なんだろう。あまりのかっこよさに当てられて窓の外ばかり見てたの、やっぱり気に障ったかな。

お昼からそうだもんね、目立つよね。ごめんなさい……。