小倉ひとつ。

「でしたら、ご遠慮なさらずどうぞ」

「いえ、その」


遠慮では、なくて。


「今日は、ちゃんと覚えておきたいので」

「え」


口ごもりながら言ったら、目が合った瀧川さんが固まってしまった。


あ、これ実は言っちゃ駄目なやつだった。全然駄目だった。ええとええと、何か言わないと。


「苦手ではないんですが、前、とてもとても緊張していたときにいただいたら、悪酔いして、ところどころ記憶が飛んでしまったことがあって。せっかくお祝いしてくださるのに忘れたら嫌だなって……」


あまりにも手ひどく酔い潰れて、一度だけ記憶が飛んだことがある。


ちょうど今みたいにものすごく緊張していたせいで、話題を探す傍ら飲んでいたら、アルコールが変な回り方をしたらしかった。


瀧川さんの前でそんな醜態を晒すわけにはいかない。


「私、今、すごく舞い上がってて。絶対変な酔い方すると思うんです」


ぎゅう、と両手を握りしめる。


「だから、大変残念ですが、祝杯はあげられないかなあと……」

「何それ、可愛いな」


途切れ途切れになんとか言い募ったら、瀧川さんが思いきり素の口調で軽く笑った。