小倉ひとつ。

でも、準備を眺めてもいいのかなとか私語を慎んだ方がいいのかなとか、何もお話しないのもお誘いしたのに申し訳ないよねとか、いろいろと問題がある。


いつもは大人数の大部屋で、人によって何にするか悩む時間も注文する時間もバラバラだったからどんどん奥に詰めて座るだけだったけれど、今回はふたりきりの個室だから、そういうことも気にした方がいいのかもしれない。


私が早く気がつけばよかった。


今は荷物を置いたその場で適当に座っているけれど、本来なら荷物は中に置かない。席入りの順番もある。


奥の席、つまり点前座から見て正面に瀧川さんがいらっしゃるのだけれど、基礎に則るならそこはお正客の席だ。

あまりご存知ない方にお正客をお願いするのはいささか気が引けた。


私だって、お正客を自信を持って引き受けるにはまだ不慣れな自覚がある。

でも、私と瀧川さんなら私の方がお茶に親しんでいるのは明白で、私が引き受けるべきだ。


ふたりきりだったら、作法を気にせずに好きなように座っても私としては何も問題ないんだけれど、さすがにお茶のお店で、お茶の先生をしてらっしゃる奥さんを前にして適当に座るわけにはいかないだろう。


お正客は基本、きちんとした作法ができていないと失礼になるし、いくらこちらがお客さんとして来ていてお店の小さな席だとはいえ、私はある程度基礎が分かっているとご存知なわけだし、やっぱり感じが悪いよね。