お会計をそれぞれ済ませた後、荷物を受け取って、扉を店員さんに開けてもらって、前回と同じように階段を降りる。


「どうぞ」

「ありがとうございます」


差し出された手をお借りして、足元に気をつけつつ、靴音を鳴らす。


無事降りきったところで、手袋ごしに手を離した。


「駅までご一緒します」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

「いいえ」


疑問形じゃないのも送りますじゃないのも、瀧川さんらしい言葉選びだった。


駅までの道のりに、美味しいお食事と寒さと、今日のたい焼きと、今度の約束の話が落ちていく。


ひとつふたつ、白ばむ吐息をお互いに重ねる。

街の明かりに薄められて、暗がりにぼんやり浮かんだ影が、お互いに伸びて重なる。


「今日はありがとうございました。また、月曜日に」

「こちらこそありがとうございました。予約でき次第すぐにお知らせします。……また、月曜日に」

「ありがとうございます。どうぞお気をつけて」

「瀧川さんも、お気をつけて」


頭を下げる。


駅のホームに向かいながら、何度も振り返った。


少し進んでは振り返るその顔が、暗闇に紛れて、角を曲がって見えなくなるまで、何度も何度も、振り返った。