「よろしいですよ。なんでしょう」
「失礼なことをお聞きして恐縮ですが……ええと、その」
この話題は置いておいた方がよかっただろうか。
いや、もう話し始めちゃったし。私から言い出したんだし。他の話題も焦る頭では思いつかないし。
固まる口を、ゆっくり動かす。
「……お名前は、かなめさん、ですか」
尻すぼみの問いかけに、瀧川さんはどうして聞かれたのか分からないというような顔で頷いた。
「はい、かなめです。え、忘れてました?」
……やっぱり昔、名乗ってもらったことがあったらしい。そうだよね、絶対あるよね。
無謀なのは分かっていたから、この恋に気づいた随分前、すぐに呼び名を瀧川さんに改めた。
もしかしたら、気づく前かもしれない。周りの人が瀧川さんとか瀧川くんとか呼ぶのを聞いて、その方が大人っぽいのかなって真似したのかも。
憧れの時点で、この優しいお兄さんに、あんまり子どもとして見られたくなかった。
そのあたりの記憶は曖昧だけれど、それこそ小学生の中学年とか低学年とか、本当に幼いときしか名前で呼んでいないと思う。
随分前から瀧川さんって呼んでたから忘れちゃっただけで、瀧川さんみたいな礼儀正しい人が、フルネームを名乗らないはずがないのだ。
「失礼なことをお聞きして恐縮ですが……ええと、その」
この話題は置いておいた方がよかっただろうか。
いや、もう話し始めちゃったし。私から言い出したんだし。他の話題も焦る頭では思いつかないし。
固まる口を、ゆっくり動かす。
「……お名前は、かなめさん、ですか」
尻すぼみの問いかけに、瀧川さんはどうして聞かれたのか分からないというような顔で頷いた。
「はい、かなめです。え、忘れてました?」
……やっぱり昔、名乗ってもらったことがあったらしい。そうだよね、絶対あるよね。
無謀なのは分かっていたから、この恋に気づいた随分前、すぐに呼び名を瀧川さんに改めた。
もしかしたら、気づく前かもしれない。周りの人が瀧川さんとか瀧川くんとか呼ぶのを聞いて、その方が大人っぽいのかなって真似したのかも。
憧れの時点で、この優しいお兄さんに、あんまり子どもとして見られたくなかった。
そのあたりの記憶は曖昧だけれど、それこそ小学生の中学年とか低学年とか、本当に幼いときしか名前で呼んでいないと思う。
随分前から瀧川さんって呼んでたから忘れちゃっただけで、瀧川さんみたいな礼儀正しい人が、フルネームを名乗らないはずがないのだ。


