小倉ひとつ。

でも、やっぱり瀧川さんだけ椅子というのは気が引けた。


本当に固めだからだろう。ふたりとも椅子に座る選択肢は、瀧川さんの中にはないらしい。


「お隣でだいじょ、……お隣がいいです」


お邪魔してるのに失礼かと思って言い直すと、少し目を見開いてから。


「ありがとうございます」


ふわりと瀧川さんが笑った。


……ううう、妙に緊張する。


失礼します、と若干早口になりながらソファーに腰を下ろす。


「失礼します」

「……はい」


ぎ、と短くきしんだ。


瀧川さんも少しあけてお隣に座ったところで、そろりと横を見てみたら、目が合って、どうしようもなく視線がさまよう。


人ひとりが座れるくらいは離れている。


普通ならちゃんと距離があいているって思えるんだけれど、瀧川さんとの過去の距離感に比べると、あんまりにも近い。


話題を振らなきゃとは思うのに言葉が出てこなくて、困ってソファーを見たり足元を見たりして、ようやくひとつ思いついた。


近い距離に若干伏し目がちになりながら、頑張って顔を上げる。


うう、近い。意識しないと恥ずかしさに目線が下がってしまう。


思いついた話題を言おうか迷って、他に何かないか探したけれど、それ以外に思いつかない。


近い距離と静かな部屋に耐えきれずに口を開いた。


「あの、瀧川さん。恐れ入ります。大変今更なことをお聞きしてもよろしいですか」


緊張と申し訳なさから急に改まって敬語成分を増やした私に、瀧川さんが瞬きをした。