小倉ひとつ。

初回の失敗が響いたのかな。

私はしばらく、見かねた祖母が手を添えてくれるまで、何かしらを失敗し、どこかしらが下手だった。


そんな苦い記憶があるものだから、そんなことにはさせるまいと思って、了承を取るのもそこそこに手を添えてしまった。


「急にすみません。綺麗にできてよかったです」


美味しそうですね、とお薄を覗き込むと、瀧川さんがゆっくり茶せんを置いた。


「いえ、大丈夫、です。お手数おかけしました。綺麗にできたのは立花さんの教え方が上手だからだと思います。ありがとうございます」

「一緒にやると分かりやすいですよね。私も祖母にしてもらったんです」


手を添えてもらえば、必然的にそちらに動くことになる。あとはその動きを真似すればいい。


やっぱりこういう長い歴史があることの教え方は、先人に倣うべきだよね。


実績と蓄積によって培われた方法は、おおよそ万人に通じるようにできている。


「……ええ、そう、ですね。分かりやすかったです」

「恐縮です。私のぶんもお願いしてもよろしいですか」

「はい」


手を開いたり閉じたりしている瀧川さんに、洗った茶せんをもう一度お渡しする。


「立花さんのお好きな量はどのくらいですか?」


顔がほころんだのが、自分で分かった。


こういう気遣いが瀧川さんらしい。