小倉ひとつ。

「お抹茶は茶杓で掬って、お茶碗の中に入れてください」


茶杓はスプーンみたいな、匙みたいな形状のもの。


茶杓で二杓と言う流派もあるし、一杓半だとか一杓だとか言う流派もあるし、三杓掬うなんていう流派もあるし、結構いろいろなんだけれど、基本的には、お好みで抹茶の量を変えてもいい。


「このくらいですか?」

「そうですね、瀧川さんはもう少しだけ足していただいた方がお好きだと思います。……ええ、そのくらいです。入れたら茶杓の先を下に向けて、縁で軽くトンとしていただいて」


見せてもらった量はすこーしだけ少なかったので、改めてすくってもらう。茶杓はこれで終わり。


本当は帛紗で拭くんだけれど、帛紗を使うのが手間なのでティッシュで拭いておいた。


おばあちゃん本当にごめんなさい。今だけ許して。


家で点てるときは無精しません。後でちゃんとやります。


お抹茶を入れたら、お湯を注ぐ。


沸かしたお湯をたっぷり入れておいたポットの前に移動。


「ストップって言うので、少しずつ注いでくださいね。……はい、ストップです」


お湯を入れすぎると綺麗に点てられなくなるので、慎重に微調整する。よし。


「じゃあ次は茶せんを持っていただいて。かるーく混ぜて少しお湯に粉を溶かしてください」


手で動きを示しながら茶せんをお渡しする。


私にちょうどいい茶せんだから、瀧川さんの手には少し小さいかもしれない。