小倉ひとつ。

「サクサク、美味しいですよね」

「ええ、美味しいですよね」


くすくす笑いながら、ふたりでひとつふたつ、ハネの欠片をつまむ。


一口食べる度にさくりと鳴って上機嫌な私を見ては、瀧川さんは楽しそうに笑って肩を揺らしていた。


粗熱が取れたたい焼きを、先ほどと同じように、持ってきた懐紙に置く。


お茶碗をそれぞれ自分で洗って拭き、さあ点てようと構えたところで、瀧川さんの視線がこちらに向いているのに気づいた。


……一応、頬の熱は引いている。気になるものといえば、お茶だろう。


さっき、私が点てるところをあんなに楽しげに見ていた人だ。やってみたいんじゃないかな。


顔を上げたら、やっぱりこちらを向いていた瀧川さんと目が合ってにっこり微笑まれたので、私も微笑み返す。


「瀧川さん」

「はい」

「もしよろしければ、お茶を点ててみませんか」


持ってきたのは私の茶道具だ。誰に遠慮することもない。


瀧川さんは扱いが丁寧だから、基本は心配いらない。何かあっても運が悪かっただけ。


ということで、私としては気軽にお貸しできる。


「よろしいんですか」


いかがですか、とお茶碗を持ち上げてみせると、食い気味のお返事が来た。目がキラキラしている。


「ええ、もちろんです。どうぞどうぞ」

「ありがとうございます……!」


少し大股でこちらに駆け寄った瀧川さんに、まずお抹茶と茶杓を差し出した。