小倉ひとつ。

深呼吸を繰り返してなんとか心を落ち着ける。


ある程度落ち着いたような気がしなくもないところで、ひとまず顔を上げた。

絶対まだ赤いけれど、気にしてはいけない。


焼き時間は先ほどと同じ時間にすればいいので、タイマー管理の下じっくり弱火で焼いて、粗熱を取って、ふたつともハネを切り落とす。


無事、焦げずに美味しそうな焼き色がついた。


「ハネ、どうします?」


小皿に選り分けたハネの残骸に、瀧川さんがこちらを見た。


「お嫌いでなければ、せっかくですからいただきませんか」


ちゃんと小皿に選り分けてるってことは、瀧川さんもきっと嫌いじゃないはずだ。


「私もおひとついただいてもよろしいですか。ハネ、好きなんです。サクサクしているものが好きなので」

「ええ、どうぞ」


頷いた瀧川さんは、もちろん立花さんがサクサクしているものがお好きなのは存じております、と笑った。


以前、サクサクしているものが好きなんですって宣言したからね。