小倉ひとつ。

「ほら、やっぱり瀧川さん手大きいですよ」


さっきこちらに来るときに手袋を貸せなかったのがその証拠である。


私が小さいのかもしれないけれど、一応平均身長以上あるんだから、手の大きさも極端に小さいわけではないと思う。

少なくとも、ピアノを弾くときにオクターブはちゃんと届く。スマホを片手で操作するのもそんなにつらくはない。


瀧川さんが首を傾げながら手を離した。


「知り合いと比較すると身長の割に手足が小さいので、多分私もそんなに大きいわけではないと思うんですが」

「そうなんですか? 私もそんなに小さくはないと思うんです。ということは、やっぱり身長差があるから……?」


男女差とはあえて言わない瀧川さんの気遣いは分かったので、こちらから身長差を挙げておく。


「立花さん、身長おいくつですか」


流れで当然そう聞いてしまったのだろう瀧川さんは、はっとして、「お聞きしてもよろしいですか」とつけ足してくれた。


身長聞かれたくない方もいるもんね。大丈夫です、としっかり頷く。


私の大学では健康診断が毎年あるので、身長は春先に測ったばかりだ。小数点は切り捨てして省く。


「私は百六十五センチです。瀧川さんは……百七十センチはおありですか」


頭上を見据えてみるに、多分百七十は余裕であると思う。絶対五センチ差じゃない。


「最近測っていないので変わっているかもしれないんですが、一昨年の時点では百八十センチです」

「背高いですね……!?」