小倉ひとつ。

「お店は十一時から開店なんですが、再来週の土曜日の何時に待ち合わせしましょうか」


遅めの開店時間なのは、個人経営のお店だから。あんまり朝早いと準備が大変らしい。

稲やさんみたいにオフィス街の近くにお店があるなら、早朝にもお仕事前のお客さんが来るけれど、そちらは住宅街に溶け込むようにあるお店だから、早朝にお店を開けても全然人が来ないんだと思う。


「今日と同じくらいの時間がいいですよね。十一時に駅でもよろしいですか」

「はい、大丈夫です。駅から歩いて十五分ほどかかるので、余裕を持って見積もって、十一時二十分に予約しておきますね」


駅から近いので、私の足でもそんなにかからない。


お出かけの行きや帰りに寄りやすい立地。


「明日には予約して、予約できましたらまた改めてご連絡差し上げます」


お電話じゃないと予約できないので、今は無理。帰る頃にもしまだ営業時間だったら、すぐ予約しよう。


「ありがとうございます。お手数おかけしますが、よろしくお願いします」

「いいえ。こちらこそ、お忙しいところお付き合いいただきましてありがとうございます」

「いえ、それが全然忙しくないんですよ。もしよろしければ、立花さんがお手すきの際にまた誘ってやってください」


瀧川さんがおどけてそんなことを言うので、思わず笑ってしまった。


では是非またお誘いさせてください、と返したら、ええ、と瀧川さんも笑ってくれた。