多分これプライベートのだよね、だって瀧川さん、私用のメールを会社のアドレスで済ませるような人じゃない。


慌てながらなんとか両手で受け取った名刺を、ありがとうございます、いただきます、とひとまず急いで制服のポケットにしまった。


まだ仕事中だから後で整理することにして。


……ええと。もしかして、もしかしなくてもこれ、一歩前進したのかな。


はい、とどうにか頷いたのは声が出たのか出ないのか。


「おそらく十四時頃にはご連絡できると思います。件名はたい焼きについて、にしますので。お手数おかけしますが、お手すきの際にでもご確認よろしくお願いいたします」


日付じゃきっと埋もれるし、立花です、より分かりやすいだろうし、たい焼きなんてそんなふわふわした件名のメールは、他に来ないと思うし。


「分かりました。すみません、返信は遅くなってしまうんですが」

「いえ、お気になさらず。お忙しいですものね。お仕事、頑張ってください」


ど、どのくらい砕けたらいいんだ。探り探りで距離を測る。


私の体感では、物陰から遠巻きにしてたところに突然颯爽と瀧川さんが現れて、手を差し伸べられたくらいの落差があった。