綺麗な形になるまで両手の指じゃ足りないくらいかかったから、もう充分いただきました、だそうだ。


私ももう充分作りました、という遠い目をしたい気分だったので、それからはたまーに器具をお借りして作る程度。


でも、まだ一応、教えていただいたことや自分なりに考えて掴んだコツを覚えている。


「素敵ですね、お家で作るの楽しそうですよね」


いいなあ、やってみたいんですよ、と浅ましく失礼にならないように意識して、さらっと笑った。


「お店のものとはまた違った難しさとか楽しさとかがあるんじゃないかなあと思ってて」


結局買わなかったけれど、いつかは買おうかなあと思っているくらいには、家庭用たい焼き器が気になっている。


「よかったらやってみますか?」

「え?」


よろしければじゃなくてよかったら、になったことに気を取られたうえ、うまく飲み込むのに時間がかかって、反応が遅れた。


「私の家、あまり遠くなくて、稲やさんから歩いて二十分くらいなんです。よろしければ、お手すきの際にでもいかがですか」


もしうまくできたら、是非ご教授ください——なんて、おどけて言うので。