「そうですそうです、ハートです。成人したときに、奮発して自分でお祝いに買ったんです。誕生石のものに憧れがあって探してたら、店頭で一目惚れしてこれにしました」


憧れのジュエリーショップに行って、あれでもない、これでもないと考えたのは、もう二年も前のこと。


嬉しくなって自然と顔が上がる。


本来はいつでも相手の目を見てお話されるのに、私の顔が瀧川さんの方を向いてから、瀧川さんもこちらを向いてくれた。


目線を落としてくれていたのは、優しい気遣いだ。


「素敵ですね。ダイヤモンドですか?」

「はい。誕生月が四月なんです」


すごい、私は成人したとき、お酒を飲もうってことしか考えてませんでしたよ、とおどけて笑う瀧川さんに、くすくす頷く。


ダイヤモンドは四月の誕生石だ。


「四月ですか。春ですね」


少し考えて、お誕生日は四月の初めですか、とおっしゃったので。


「えっすごい、なんで分かったんですか!?」


思わず声が大きくなる。


私、そんなに四月初めに生まれたような顔してるかな。


びっくりしながら手で顔を押さえた私に、瀧川さんはゆるりと笑って、「お名前がかおりさんでしょう」と微笑んだ。


ひえっかおりさんって言われた。かおりさん。


…………たおれそう。


勝手に甘いフィルターをかけたくなるので、意識を切り離すべく、たい焼きをかじる。