「いただきましょうか」

「そう、ですね。いただきましょうか」


自分の心音に慌てていたら、瀧川さんが提案してくれたので、頷いてたい焼きに手を伸ばす。


お盆から取り上げたたい焼きは、焼きたてだから、まだほかほかあたたかい。


「いただきます」

「……ありがとうございます、ごちそうさまです」

「いいえ。どうぞどうぞ」


なんだかもうお腹がいっぱいな気しかしないのだけれど、せっかくごちそうしてくださるのに、持ち帰るのも悲しい。


瀧川さんにもう一度お礼を言ってから、いただきますを呟いて、小さく一口いただく。


慣れ親しんだ好きなあんこの味が広がって、頰が緩んだ。


「美味しいです」

「よかったです」


心臓はまだうるさいけれど、湯気が出そうな熱は、静かに引いている。


にっこり笑うくらいの余裕はなんとか出てきた。


もう熱くない。よし。そっと耳に触ると、つられてか瀧川さんが一度こちらを見て、すぐに前を向いた。


「それ、ハートですよね?」


気を遣わせないようにか短い言い回しで、視線はたい焼きに落とされている。


可愛いですね、と小さな呟きが続いた。