部屋に入ると着替えるのも、雨に濡れた体を拭くのも面倒で、苛々しながら私は持っていた鞄をソファーに投げ捨てた。

すると鞄の口が開いていたらしく、中のものが勢いよく床にぶちまけられる。そのままの勢いで、鞄はソファーをするすると滑り、近くにあったルームランプをなぎ倒し、倒れたランプからガシャンと何かが割れた音がした。


――――今日は何処まで付いていないんだろう……


大きく溜め息をついたが、ぶちまけられた荷物もランプも拾わなかった。


だってもう、何もしたくない。


荷物が散らばったソファーと床。それを乱暴にかきわけて、かわりに自分がソファーへ。

そして横になるとソファーに並べられたクッションと背もたれの間に入り込み、体を丸めた。背もたれ側へ顔を向けると、まるで穴の中に入ったかのような安心感。




もう、何にもしたくない。

しゃべるのも嫌。

動くのも嫌。




そういえば大和はまだ帰ってきていなかった。最近仕事が忙しくなってきたって言ってたから、きっと今日も残業だろう。

よかった……

これで彼にうるさく言われたら、理性を保っている自信がない。