「律くん、なんで…」

「…なんて言っていいのか、分からなかった」

「え…」

「俺は言葉選びが下手だから、志乃を喜ばせられるような甘い台詞なんて知らない。一瞬で慰められるような巧みな言い回しもできない。…そんな俺が何を言っても、逆効果な気がした」

「っ」

「…けど、どのみち傷付けるんなら、ちゃんと話せばよかったんだ」



ふわりと腕を緩めた彼が、普段びくともしない眉をハの字に下げる。

ごめん、とだけ告げる彼の白い吐息がやけに綺麗で、胸がぎゅうっと締め付けられた。



「謝るのは私の方だよ。…ツリーに付き合わせてごめんなさい。怒って、逃げ出して、ごめんなさい」

「…」

「クリスマスに一緒にいられるだけでも奇跡なのに、ジンクスに執着したり、感情的になってくれないとか文句言ったりして、ごめんなさいっ…」

「……違うよ」

「…え?」

「志乃は、何も分かってない」



律くんの言葉の意味が分からなくて、私はきょとんとした顔で首を傾げた。

すると彼は何やら呆れたように小さくため息をついてから、『言わなかった俺も悪いか』なんて一人つぶやいた。



「志乃は、もう少し俺に愛されてる自覚を持った方がいい」

「…?!」



突然のドストレートな彼の言動に、私は言葉を失った。

巧みな言い回しなんかできないとは言っていたけれど、ここまで真っ直ぐだとかえって心臓に悪い。

冷え切った指先を当てて、火照った頬をなんとか冷ます。



「で、でも、何かに頼ってまで繋ぎ止めたいと思える関係性なんてないって言ったじゃんか」

「…何かに頼るくらいなら、自分の力で繋ぎ止めるよ。だから特別ジンクスだとか、そういうものに縋る必要ない」

「そ、そういう意味だったの…?」

「そう。…他は?」