ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

「や、めて……! その三人は……関係ない!」

「仕方のないことです。あなたは私に力を示す事が出来なかったのですから」
 
ザハラはそう言うと、私の体を地面へと強く叩きつけた。

「がはっ!!」
 
ザハラは私から手を放すと、アレスたちへと体を向ける。

「そこで大人しく寝ていて下さい。目が覚めた頃には、全てが終わっていますから」

「……」
 
もう体を動かす事が出来なかった。

体に熱がこもっているせいで、息をするのだってやっとだった。
 
ザハラはアレスたちの方へと歩いて行く。

「……だ、め」
 
今の私じゃ……みんなを守れない。

今直ぐ立ち上がって、ザハラを追いかけることすら出来ない。

『だから私と変われば良かったのよ』
 
暗闇の中で背を向けている私に、もう一人の私の声が聞こえる。

『私と一つになれば、あなたは救われるのよ。もう苦しむ必要だってなくなるのよ?』

「救いなんて……求めてない」
 
今の私が心から求めるのは、みんなを守れる力だ。

それが今直ぐ手に入るんだったら……何もいらない!!

『ふ〜ん。じゃあ私が変わりに戦ってあげる』

「……えっ」
 
もう一人の私は私の体を後ろから抱きしめ、耳元で囁き告げる。

『早くしないと、アレスが殺されるわよ』

「っ!」
 
その言葉に私の瞳が紅く染まり上がる。そして薄っすらと体に紋章が浮かび上がった。

「それで……みんなが助かるなら」
 
私の髪は銀髪へと変わっていく。

「私は……あなたに全てを捧げる」

『ふふっ。良い判断ね。そう言うあなたは嫌いじゃないわ。あなたの心、感情、思考は全て私のものよ』
 
その言葉を最後に私の意識は途切れた。

「ごめんなさい……アレス」