「お帰りなさいませ、ザハラ様!」

「今帰りました、ヨルン。準備を始めてください」

「分かりました!」
 
ヨルンと呼ばれた人は、私たちの横を通り過ぎると慌てて家から出て行った。

その姿にびっくりした私たちは、彼が出て行った方を見つめる。

「さあ、そちらへお座りください」
 
ザハラに促された私たちは、それぞれ椅子に座った。

「それでは依頼の件について、詳しくお話しいたします」

「ああ、頼む」

「先程も言いましたが、あなた方にはある竜を探して欲しいのです」

「その竜って言うのは?」

「この島の守り神――白竜エーデルです」
 
エーデル? その名前を聞いた時、一瞬だけど頭がチクリと痛んだ。

「エーデルは一ヶ月前に、このラスールから姿を消しました」
 
ザハラは悲しい表情を浮かべると視線を下げる。
 
彼女の様子からして、その白竜エーデルはきっとこの人たちにとって、凄く大切な竜だったのだろう。

守り神と呼ばれているって事は、みんなから慕われていたに違いない。

「……何かあったのか?」
 
アレスの言葉に頭を左右に振ったザハラ言葉を続けた。

「理由は分かりません。しかしエーデルが姿を消したのは、一ヶ月前に感じた禍々しい魔力の直後でした」
 
彼女の言葉に私たちは目を見張った。
 
この場に居る私たちは、その禍々しい魔力の正体を知っている。

それはきっと、世界の魔法の魔力だ。
 
まさかエーデルはその魔力を感じ取って、身を守るために姿をくらませた? 

しかしあの魔法とエーデルは関係がないはずだ。だったら、別に何か理由があって。

「私たちの方でも、心当たりのある場所は全部探しました。しかし、それでも見つけられなかったのです」

「それで俺たちに依頼を?」

「そうです。もしかしたらエーデルはあなた達が住んでいる、本土の何処かに居るかもしれないと思ったので」
 
ザハラの言葉にアレスは考え始める。